「抜刀隊」における動詞「起こす」
軍歌「抜刀隊」の歌詞への疑問
「抜刀隊」。田原坂の戦いでの「抜刀隊」の活躍をうたったもので、大体の人が名前くらいは耳にしたことがあるでしょう。
先日古文の授業で助動詞「き」を学習していた時、ふとその「抜刀隊」の一節を思い出しました。
~ 天の許さぬ叛逆を 起こせし者は ~
「起こせし」に注目されたし。古文文法では四段活用の「起こす」は、連用形接続の助動詞「き」(「し」は「き」の連体形)に接続するために連用形「起こし」にならなければなりません。しかし、「起こせ」になっているのです。このことを不思議に思い、もともとの詩が書かれた資料を探してみました。
ここまでの要約:抜刀隊の「起こせ」は、本来は連用形「起こし」でないか?という疑問が発生した。
明治15年『新体詩抄 初編』の記述
この本の上で、歌詞が初めて公開されました。そこには次のような歌詞が掲載されています。
~ 天の許さぬ叛逆を 起こしゝ者は ~
これは問題ないでしょう。
明治24年『軍歌集』の記述
こちらには、次のような歌詞が載っています。
~ 天の許さぬ叛逆を 起こせし者は ~
これは、(学校で習う)古文文法に忠実に当てはめて考えるなら問題あるのではないかと。初めの項目で述べたような問題点です。
導かれる結論
原典(明治15年の『新体詩抄 初編』)の歌詞は学校古文文法的には問題ありません。
しかし、明治24年『軍歌集』による歌詞やそこから引用された歌詞などは、学校古文文法的に少し違和感を覚えるものでした(Wikipediaによれば、作詞が古いこともあって時間がたつにつれ差異が生まれた、とのことです)。
私の初めの疑問は、明治24年『軍歌集』による歌詞しか知らなかったから湧き出たのです。
この節の要約:抜刀隊の歌詞、原典では「起こし」で問題ない。時間経過で変化した「起こせ」の歌詞しか知らなかったから、このような疑問が出た。
ではまた。